なぜ建替えが進まないのか?(その4)

合意形成の難しさ(その2)
マンション建替え問題で大変な事態に陥っている例を紹介します。そのマンションは、「マンションを建替えるべき」という建替え派と、「建替えはせず、このまま維持していくべき」という維持管理派とで真っ二つに分かれてしまっていました。
現在のマンションでは、ほとんどが各住戸に取りつけられた給湯設備でお湯を沸かす「個別方式」になっていますが、古いマンションの中には「セントラル方式」という給湯システムのところがあります。これは、マンションの地下などに大きな給湯設備を設けて、建物内を循環させるものです。このマンションは「セントラル方式」を採用していました。
ある日、そのセントラル方式の給湯器が故障し、お湯を沸かすことができなくなってしまいました。お湯はライフラインともいえることから、通常ならば管理組合が管理会社に依頼して給湯器の修理見積りを出してもらい、すぐ修理をするところです。しかし、建替え派と維持管理派が対立していることから、管理組合をまともに運営することができない状態になっていたため、給湯器の修理を進めることができませんでした。
当然、給湯器は故障したままです。住民はお湯が使えないため、仕方なく1階の駐車場にユニット型のシャワーブースとプロパンガスのボンベを置き、シャワーを浴びたい人はそのシャワーを使うという急場しのぎの対応をしていました。なんとも悲惨な状況です。もちろんこれは極端な例ですが、区分所有者の合意形成をはかる難しさがうかがえるでしょう。
マンションの建替えとは、現在の隣近所とのコミュニティを維持しつつ、その地に新たな建物を建て、そこに末永く住まうことに同意する区分所有者が5分の4、つまり8割を超えた場合にのみ可能な選択肢なのです。
コミュニティ形成の大切さと難しさを痛感する事例です。
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- 著者/須藤桂一
株式会社シーアイピー 代表取締役社長
ゼネコン勤務や、塗装工事会社・リフォーム会社の2代目社長として大規模修繕工事を受注している最中、様々なマンション管理組合の問題に直面し、1999年にマンション管理組合専門のコンサルタント会社であるシーアイピーを設立した。
これまで約33,000戸のマンション管理組合の相談を受け、問題解決を図る。
数多くのメディアに出演、書籍の出版や監修も行っている。詳細はこちらまで。