マンション建替えについて考えてみた(その3)

耐震という観点
マンションの建て替えを積極的に考えざるを得ないポイントがあります。それは耐震面です。阪神・淡路大震災や東日本大震災、最近の地震の多さなど、地震大国である日本においては、地震に対する対策の必要性は誰もが切実に感じていることでしょう。
「旧耐震基準」(1981年5月31日までの建築確認において適用された基準)では、中規模の地震(震度5強程度)に対して、建物がほとんど損傷しないという想定で設計されていました。ただ、それを上回る大規模な地震(震度6程度)に対しては検証されていませんでした。
そこで、1981年6月1日以降の建物に適用されている「新耐震基準」では、震度5程度の地震では「軽微な補修で使い続けることができる」、震度6の地震でも「建物が倒壊しない」、つまり人命に危害を及ぼすような被害が生じないようにする、と構造の基準が引き上げられています。
そのため、旧耐震基準の時代に建てられたマンションは、新耐震基準に合致する耐震性が確保されているかどうか、耐震診断を行うことになります。診断結果次第では、大規模な耐震補強工事が必要になり、マンションの解体や建て替えを視野に入れなければならなくなるのです。
このように、マンションはそれぞれ異なる要因を持っているので、実際の耐用年数を考える場合に、すべてのマンションを一律に扱うことはできません。しかし、少なくとも1981年6月以降の新耐震基準後、ここ30年ほどの間に建築されたスケルトン・インフィルのマンションなら、建て替える必要はないのではないかと考えています。
日本には、法隆寺をはじめ、木造建築でも1000年以上使い続けている建造物がいくつもあります。そのような木造よりもずっと頑丈で、耐久性のある鉄筋コンクリート造のマンションを、たかだか数十年で取り壊してしまうのは不経済であり、環境にも大きな負荷をかける行為だと考えます。
「いつ建て替えをしたらいいか」と考えるのではなく、「どのようにしたら建て替えをせずに済むか」と考えて、100年以上使い続けることを前提にしてマンションの維持保全に努め、スクラップアンドビルドではない社会を目指していきたいと考えます。
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- 著者/須藤桂一
株式会社シーアイピー 代表取締役社長
ゼネコン勤務や、塗装工事会社・リフォーム会社の2代目社長として大規模修繕工事を受注している最中、様々なマンション管理組合の問題に直面し、1999年にマンション管理組合専門のコンサルタント会社であるシーアイピーを設立した。
これまで約33,000戸のマンション管理組合の相談を受け、問題解決を図る。
数多くのメディアに出演、書籍の出版や監修も行っている。詳細はこちらまで。